土地を相続した場合、相続税はどのくらいかかるのか気になる人もいることでしょう。相続によって土地を所有する場合、相続税対策にはアパート経営が有効だと言われています。
また、相続税を節税するには相続財産の評価額(価値)を下げることが有効です。
では、なぜアパート経営が相続税対策になるのか、その理由とメリット・デメリットについてわかりやすく説明していきます。相続が発生してからでは手遅れになりますので、あらかじめ土地の相続税対策に対する理解を深めておきましょう。
土地の相続税に関する仕組み
すでにご存知の方もいるかもしれませんが、まずは相続税とは何かをおさらいしましょう。
相続税とは
相続税とは、亡くなった人(被相続人)から財産を相続した人(相続人)が納める税金です。
相続税は、個人が被相続人(亡くなった人のことをいいます。)から相続などによって財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税金です。
引用元: 国税庁|タックスアンサー「相続税」
相続財産とは、土地や建物などの不動産、骨董品や貴金属などの動産を指し、いわゆる価値があると判断されるものです。
ただ、相続税が課される対象は相続財産すべてではありません。相続財産の金額が一定額を超えたとき、超えた部分のみに課税されます。その一定額を「基礎控除額」と言います。
「基礎控除額」の計算式は次のとおりです。
基礎控除額=3,000万円+600万円× 法定相続人の数
引用元: 国税庁|No.4152 相続税の計算
例えば、相続人が2人であれば基礎控除額は4,200万円となり、相続財産の総額のうち4,200万円を超えた部分について相続税が発生します。
つまり、相続税で損をしないためには、できるだけ相続財産の評価額(価値)を下げるように対策する必要があるのです。
土地の相続税とは
土地を相続する場合、「路線価方式」と「倍率方式」いずれかの方法で土地の評価額を算出します。
それぞれの特徴と計算式は次のとおりです。
【路線価方式】
特 徴:路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額
計算式:路線価 × 補正値(※)× 土地面積
※土地の形状等で補正される率【倍率方式】
特 徴:路線価が定められていない地域の土地の評価方法
計算式:固定資産税評価額 × 評価倍率(※)
※地域ごとに異なる倍率
引用元: 国税庁|No.4602 土地家屋の評価
土地を相続する際も相続税の計算方法は変わらないため、できるだけ土地の評価額(価値)を下げていくことが重要です。
アパート経営による相続税対策が有効な理由
では、なぜアパート経営による相続税対策が有効なのでしょうか。
その理由は、更地の状態よりも、アパートが建築されている土地の方が「貸家建付地」として土地の評価額が下がるからです。
つまり、土地を相続する場合、更地で相続するよりも、アパートが建築されている土地の方が相続財産の評価額を下げることになるため、相続税対策(節税)になるのです。
具体的には、「貸家建付地」は更地に比べて約20%減額されるため、評価額の大幅な減額が可能です(減額率は地域などによって変わります)。
例えば、時価1億円の土地を相続した場合は以下のような違いがあります。
【更 地】 評価額:1億円
【アパート】 評価額:8,000万円程度
課税対象となる評価額が約2,000万円下がり、大きな節税につながります。
貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 借地権割合
× 借家権割合 × 賃貸割合
引用元: 国税庁|No.4614 貸家建付地の評価
アパート経営で相続税対策するメリット
ここまでは、なぜアパート経営が相続税対策に有効なのか、具体的には貸家建付地が更地に比べて評価額が下がるため節税対策になることを説明してきました。
それでは、ここからはアパート経営で相続税対策をする3つのメリットについて説明していきます。
メリット1.安定した不労所得を得られる
健全なアパート経営ができれば、安定した収入を継続して得ることができます。いわゆる不労所得であり、働かなくても収入を得られるため、退職後の生活資金にも活用できます。
メリット2.生命保険の代わりになる
ローンを組んでアパート経営を始める際に、団体信用生命保険に加入します。団体信用生命保険に加入していると、ローンの契約者が死亡・または重度の障害を抱えた場合などに、返済者に代わって保険会社がローン返済を行います。
アパート建設のためのローンにおいても、この保険が適用されるものがあるため、ローン返済を終えたあともアパートが存続している限りは残された家族が経営を引き継ぐことができます。
そして、死亡や重度の障害などを抱えた返済者は、ローンのない土地と家賃収入を家族に残すことができます。
メリット3.経済変動に強い
アパート経営はインフレに強いこともメリットです。
インフレとはモノの値段が上がり続ける状態のことで、つまり「お金の価値が下がる」ことを指します。
例えば、1個100円で購入できていたリンゴが1個200円出さないと買えなくなるような状態です。不動産は、短期間で価格が大きく変動することはありません。預貯金や株式などの「金融資産」とは違い、「実物資産」のため、物価が上昇すれば家賃も上がる→家賃が上がればアパート自体の価値も上がるということになります。
アパート経営で相続税対策するデメリット
では、反対にアパート経営が相続税対策においてどのようなデメリットがあるのかを見ていきましょう。
デメリット1.空室のリスクがある
健全なアパート経営ができていれば問題ありませんが、空室がある場合、その分の家賃収入が得られません。
相続税対策のためにアパート経営をするのであれば、そもそも借り手が見つかりそうな物件になるのか、地域のニーズに適したアパート経営ができそうか、など将来にわたって需要が見込めるかどうかを見極める必要があります。
空室が多くなりそうであれば、そのアパート経営はリスクが高いといえます。
デメリット2.修繕費がかかる
アパートを建築したあとに必ずついてくるものが修繕費です。
一軒家でもアパートでも同じことですが、建物には経年劣化に伴う修繕が必要になってきます。年数が経つにつれて大規模なリフォームやリノベーションも必要です。
そして、修繕費は所有者であるアパート経営者が支払わなければなりません。アパート経営を考える場合には、将来的な利益だけではなく修繕費についてもアパート経営における必要経費として考慮する必要があります。
デメリット3.入居者とのトラブルの可能性
アパート経営で起こり得るトラブルとして、入居者の家賃滞納などが挙げられます。
例えば、家賃滞納が発生すると家賃が回収できず、滞納された分だけ利益が減ります。結果として、もしアパート経営のためにローンを利用し、家賃収入で返済計画を立てていた場合、予定していた家賃収入が得られなくなります。
家賃滞納はローンの返済計画に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
アパート経営は相続税対策として有効な手段です。ただ、必ずしも成功するとは限りません。
アパート経営による相続税対策で損をしないためには、メリットとデメリットを十分に理解し、早めに対策を講じる必要があります。