自分が建物や土地を相続した時、その不動産が私道にしか接していなく、かつ私道の持ち分がない…そんな時にどのようなデメリットがあるのかを基本的な情報から紹介していこうと思います。

道路の種類「公道」「私道」とは?

公道と私道

道路には大まかに分けると「公道」と「私道」があります。公道は国や県、市などが所有し管理をしている道で、私道は個人や法人が所有し管理をしている道です。
何が違うのかを簡単に言うとその道を舗装したり草刈りしたりと整備する時に誰が費用を出すのかだったり、誰でも自由に通っていいのか、所有している人の許可がいるかが大きな違いです。

道路の種類、持ち主の調べ方

道路の種類と持ち主を調べる

土地の用途が田や畑、山林等でなく、現況建物がある宅地や、将来建物を建てたい土地の場合建築基準法で接道義務があります。公道に接していない場合は私道を作り、私道から公道に接道させる必要があります。

自分の所有している土地や建物に接している道路が公道か私道かを調べる方法は何種類かあります。

①物件のある役所に行って確認する方法

地図や地番の分かるものを持って役所にいき道路関係の課の窓口で接道している道路の種類の確認ができます。公道の場合は持ち主が国なのか県なのか市なのか等がわかります。ただし私道の場合は所有者までは役所では教えてもらえない事が多いです。

②法務局に行き公図、所有者情報を入手する

公図とは法務局に備えられている土地の大まかな大きさや地番が一筆ごと記載された地図です。通常の地図と違い、地番ごとに記載されているので見たことがない人にはかなり解りづらい地図です。法務局に行く際には住居表示でない「地番」を把握してから法務局にある無料で見れる「ブルーマップ」で位置を確認して、申請書を記入し公図を取得します。自分の土地に接道している道路の地番の「全部事項証明書」を取得すると、私道の所有者がわかります。持分割合等も確認できます。

私道持分とは?

私道持分とは

前述した私道持分割合というのは、良くある事例でいえば分譲地の中の行き止まりになってしまうような袋小路な道路はほぼ私道といえるでしょう。分譲地内の道路は一筆若しくは何筆かに分かれていても見た目1つの道路を公的な所有者でなく、隣接している所有者で所有権を共有しあっています。その共有部分の割合が「持分」です。登記の全部事項を見ると「乙区」と言う項目に権利の部分が記載されています。
一筆の私道の共有の場合は所有者の項目に住所の次に½等持分が記載されています。
他にも1つの私道を何筆かに分けてそれぞれを隣接している所有者が所有している場合もありす。

私道持分が無い場合の問題点

問題点

自分が所有した不動産が公道に接していなく、私道持分がなかった場合どんな問題点があるのでしょうか。

居住する場合の問題点 通行の問題

権利と一括りに言いますが「所有権」「占有権」「通行地役権」等それぞれの権利について登記されているものが記載されています。
私道に関して言えば所有権があればもちろん自由に通行できますし、通行地益権が設定されている人も通行できます。
ここで重要なものが登記されていない場合の権利は主張できるのか?です。

民法では民法177条に「不動産に関する物権変動は、登記法の定めるところに従いその登記をしなければ第三者に対抗することができない」となっています。つまり登記がないとその権利は主張できませんよという意味で、例えば親の代では接道がない土地でも口約束で私道を通ることを許可されていたが、それを登記していない場合は子供の代では権利は主張できないんです。

今まで当たり前に通行に使っていた私道だとしても所有者が代わったら当たり前には使えない場合があり、近隣の私道所有者と折り合いが悪かったりして万が一争った場合は通行地益権が登記されてない場合は自由に道路を通行する権利を主張できないんです。もちろん売買や賃借で土地の使用権利をもった場合も当然には私道を通っていい事にはなりません。

ただ民法には回りを他の土地に囲まれていて公道に出られない土地の場合は回りの土地を通行して公道に出ることができる「囲繞地通行権」の設定があります。これは登記がなくても通行できるのですが、その土地の所有者に通行料等を納めなければなりません。

従って、私道持分がなく、公道に接していない不動産に住む場合は通行面で私道の所有者ときちんと話し合いをしておく必要があります。

建て替えやリフォーム時の問題点

自宅の前が私道の場合、通行の他に問題なのがガスや水道等の引き込みです。建て替えやリフォーム時に上下水道やガス等のライフラインの引き込みや工事車両の搬入にどうしても私道の地下を掘ったり、通行したりしなければなりません。その際は私道の所有者に許可を得なければなりません。持分がある所有者全員に許可を得る必要があります。前述した通り、場合によっては料金を請求される可能性もあります。

売却時の問題点

前述した通り、持分の無い私道に接道した物件の場合、今で私道の所有者さんと良好な関係を築けていたのはあくまでも前所有者さんです。売買された場合は新たな私道持分の無い所有者さんと私道の所有者さんとで良好な関係を築けるかはわかりません。また前述した許可を必要とする事があり、どんなにいい立地でも売却の金額が他の物件より下がってしまったり、場合によっては売却事態が困難になる場合があります。予防策としては、売却前に私道の所有者さんと通行、掘削に関する所有者が変わった時の事項も含めた許可承諾書の取り交わしをしておいた方が良いでしょう。

まとめ

私道持分なしの不動産の相続

私道の持分が無い不動産を相続した場合の問題点をそれぞれのケースでご説明させていただきました。

私道しか接道が無い物件を相続すると住むにしろ、売却するにしろ問題点の方が多いと感じられる方もいると思います。
しかし、そもそもなぜ許可や料金を請求されるかというと私道は公道と違い、所有者か費用を負担して整備している道路の為整備費用を負担していない、つまり所有していない人の為に掘削や通行を許可するのを無料で行うのはフェアでは無いからです。昨今永代でその土地に居住している事が少なくなってきましたので、代替わり等で今までのお付き合いが当たり前に継承されると言う安直な考えではなく、相続した土地に住むのであれば近隣の方との良好なお付き合い、売却時に売主側でもできうる限りの対策を行うのが懸命であると言えるでしょう。